AMD 第3世代Ryzen Threadripper最新情報まとめ
日本時間11月7日、AMDより以前から予告されていたRyzenの最上位シリーズ、Ryzen Threadripperに関する情報が公式に発表されました。当記事ではそれらの発表内容を分かりやすくまとめています。
AMD Ryzen Threadripperとは
クリエイターや開発者、自作PC愛好家などをターゲットにした、一般向けとしては最高スペックのハイエンドCPUで、最大の特徴はそのコア(スレッド)数の多さです。今回発表されたのは第三世代となるThreadripperの最新シリーズ、そして新たなソケットとチップセットです。
第3世代Ryzen Theadripper は3970Xと3960X
・今回発表されたのは『3970X』と『3960X』の2機種
・上位の3970Xは32コア64スレッド
・3960Xは24コア48スレッド
・クロック数増加
・キャッシュ容量は最大144MBに増加
・PCIe4.0に対応し、いずれも最大72レーン使用可能
・CPU-チップセット間の通信をPCIe4.0×8にすることで高速化
・製造プロセスは7nm
・メモリはクアッドチャンネル動作
・最大メモリ速度は3200MHZでECCメモリもサポート
・更に上位モデルが出る可能性は十分ある
昨日発表となった第三世代AMD Ryzen ThreadripperのCPUは「AMD Ryzen Threadripper 3970X」と「AMD Ryzen Threadripper 3960X」 の計2機種です。
スペック表
まずは各CPUのスペックをご覧ください
モデル | コア/スレッド | ブースト/ベースクロック(GHZ) | 合計キャッシュ(MB) | TDP(W) | PCIe4.0レーン数(CPU+TRX40) | 価格(USD) | 国内価格 | 発売日 |
Ryzen Threadripper 390X | 64/128 | 不明 | 288 | 280 | 不明 | 不明 | 不明 | 2020年内 |
Ryzen Threadripper 3970X | 32/64 | 4.5/3.7 | 144 | 280 | 88(72利用可) | 1,999 | 257,180 | Nov,25,2019 11月30日11:00発売(日本時間) |
Ryzen Threadripper 3960X | 24/48 | 4.5/3.8 | 140 | 280 | 88(72利用可) | 1,399 | 181,280 | Nov,25,2019 11月30日11:00発売(日本時間) |
特徴
最大90%のパフォーマンス向上
画像:AMD公式発表のスライドを模して作成した資料になります
他にも動画編集ソフトのAdobe Premiereや、ゲームエンジンのUnreal Engineなどのクリエイティブソフトにおける性能も向上しているので、やはり今回のThreadripperシリーズも他コアを活かしやすいクリエイティブ用途がメインとなるでしょう。
処理性能の高速化
ベース、ブーストクロックともに増加し、キャッシュ容量も増えたことからCPU自体の処理性能が向上していると考えられます。
PCIe4.0に対応
先行して販売されている一般Ryzenシリーズ同様、PCIe4.0に対応しました。
レーン数増加
前世代Threadripperの64レーンからから8レーン増えて実際にユーザーが使用できるのが合計で72レーンとなりました。
CPU・チップセット間の通信高速化
CPU-チップセット間の通信がPCIe3.0からPCIe4.0にアップグレードされたことにより、帯域が4倍になったようです。
高クロックメモリ対応
前世代ThreadripperがDDR4-2933までサポートだったのに対し、今回の第三世代ThreadripperはDDR4-3200までサポートとなります。ECCメモリについては従来通りサポートされます。
最大メモリ容量は1枚32GBのメモリもサポートし、最大で256GBとなります。
7nmプロセス
先行して発売されている一般向けRyzenシリーズ同様、製造プロセスは7nmとなります。
一般向けのRyzenではその効果が大きく出ているので、Threadripperも期待が持てるでしょう。
発売日は?
今回発表された「Ryzen Threadripper 3970X」と「Ryzen Threadripper 3970X」についてはいずれも世界共通で今月(11月)の30日、午前11時(日本時間)発売となっています。
国内価格は?
日本AMDのメーカー想定価格は・・・上位のRyzen Threadripper 3970Xは257,180円、Ryzen Threadripper 3960Xは181,280円
気になる箱は?
非常に派手なことで知られるThreadripperの箱ですが、今回の箱はどうなっているのでしょうか?
こちらをご覧ください。
For those of you looking for the best in high end desktops, we are proud to unveil third gen @AMDRyzen Threadripper today… delivering incredible performance for creators, developers, and enthusiasts who just love having the best!! 😀 pic.twitter.com/u6lu2ntIB7
— Lisa Su (@LisaSu) November 7, 2019
AMD CEO、Lisa Su氏の投稿です。
Lisa Su氏が手に持っているモノが第三世代Ryzen Threadripperであると考えられます。従来の箱からすると非常に落ち着いたデザインで、運搬にも適しているように見えます。
画像:Lisa Su氏ツイートの手元拡大画像
こう見るとかなり大きな箱に入れられていることが分かりますが、従来のものと比べれば落ち着いたデザインと言えるでしょう。
画像:(左、上)第2世代・(右、下)第1世代
ソケットは『Socket sTRX4』
・長期的な拡張性を見据えてソケットを更新
・TR4との互換性はなし
・CPUクーラーはTR4対応品でOK
CPUの大幅な変更により、ソケットも新たな『sTRX4』となりました。またこのsTRX4は従来のTR4とは互換性の失われたものとなっています。そのためCPU更新の際にはマザーボードの交換も必要となりますので、ご注意ください。しかしCPUクーラー用のネジ穴はTR4と共通であるため、従来品のTR4対応クーラーであれば使用可能です。
画像:Socket sTRX4(ASUS ROG Zenith II Extreme)
画像はASUSのものを使用していますが、ソケットは全て共通です。
見た目ではそこまで大きな変化は見られませんが、従来のTR4とは互換性はありません。
チップセットは『TRX40』
・USB3.2を12ポートまでサポート
・USB2.0を4ポートまでサポート
・PCIe4.0×4のNVMeを2つまでサポート
・マルチGPU(CrossFire・SLI)サポート
・SATAは20ポートまでサポート
・.チップセットのPCIe4.0レーンは16
現在公表されている情報で目立ったものはUSB3.2に対応したことくらいでしょうか。
TRX40を搭載したマザーボードは各社から発表されています。
前世代との比較
モデル | コア/スレッド | ブースト/ベースクロック(GHZ) | 合計キャッシュ(MB) | TDP(W) | 合計PCIe4.0レーン数 | 製造プロセス | 対応メモリ | 価格(USD) | 発売日 |
Ryzen Threadripper 3970X | 64/128 | 不明 | 288 | 280 | 不明 | 7nm? | 不明 | 不明 | 不明 |
Ryzen Threadripper 2990WX | 32/64 | 4.2/3.0 | 80 | 250 | 64(PCIe3.0・PCie2.0) | 12nm | DDR4-2933 | 1,799 | Oct,8,2018 |
Ryzen Threadripper 3970X | 32/64 | 4.5/3.7 | 144 | 280 | 72(PCIe4.0) | 7nm | DDR4-3200 | 1,999 | Nov,25,2019 11月30日11:00発売(日本時間) |
Ryzen Threadripper 2970WX | 24/48 | 4.2/3.0 | 80 | 250 | 64(PCIe3.0・PCie2.0) | 12nm | DDR4-2933 | 1,299 | Oct,9,2018 |
Ryzen Threadripper 3960X | 24/48 | 4.5/3.8 | 140 | 280 | 72(PCIe4.0) | 7nm | DDR4-3200 | 1,399 | Nov,25,2019 11月30日11:00発売(日本時間) |
Ryzen Threadripper 2950X | 16/32 | 4.4/3.5 | 40 | 180 | 64(PCIe3.0・PCie2.0) | 12nm | DDR4-2933 | 899 | Oct,9,2018 |
Ryzen Threadripper 2920X | 12/24 | 4.3/3.5 | 38 | 180 | 64(PCIe3.0・PCie2.0) | 12nm | DDR4-2933 | 649 | Oct,9,2018 |
また第三世代CPUのスペックは太字で表記しています。
第三世代Ryzen Threadripperが発表となり、前世代のCPUは価格が下がる可能性が高いです。そのため、前世代のCPUを購入するというのもアリかもしれません。
Intel第10世代Core-X、Cascade Lake-Xとの比較
モデル | コア/スレッド | ブースト/ベースクロック(GHZ) | 合計キャッシュ(MB) | TDP(W) | 合計PCIe4.0レーン数 | 製造プロセス | 対応メモリ(最大容量) | 価格(USD) | 発売日 |
Ryzen Threadripper 3970X | 32/64 | 4.5/3.7 | 144 | 280 | 72(PCIe4.0) | 7nm | DDR4-3200(不明) | 1,999 | Nov,25,2019 11月30日11:00発売(日本時間) |
Ryzen Threadripper 3960X | 24/48 | 4.5/3.8 | 140 | 280 | 72(PCIe4.0) | 7nm | DDR4-3200(不明) | 1,399 | Nov,25,2019 11月30日11:00発売(日本時間) |
i9-10980XE | 16/32 | 4.8/3.0 | 24.75 | 165 | 72 | 14nm | DDR4-2933(256GB) | 979 |
|
i9-10940X | 14/28 | 3.3/4.8 | 19.25 | 165 | 72 | 14nm | DDR4-2933(256GB) | 784 |
|
i9-10920X | 12/24 | 3.5/4.8 | 19.25 | 165 | 72 | 14nm | DDR4-2933(256GB) | 689 |
|
i9-10900X | 10/20 | 3.7/4.7 | 19.25 | 165 | 72 | 14nm | DDR4-2933(256GB) | 590 |
|
コア、スレッド数や価格も全く異なる製品同士になるので、単純な比較というのはできませんが、Intel、AMDの一般向けハイエンドフラッグシップCPUとしてみるとAMDがIntelを大きく引き離したという感じです。コア数からキャッシュ、PCIe(4.0&レーン数)、製造プロセス、メモリ速度まで、AMDが完全に有利です。
Intel Cascade Lake-Xとコア数で比較するとなるとAMDのRyzen 9シリーズが挙げられると思います。CPU単体のコストパフォーマンスで考えると互角に見えますが、Core-XシリーズのCPUに対応したX299マザーボードは高価な製品が多くを占めます。それに対してRyzen 9は使おうと思えば数千円からでも購入可能なB450マザーボードでも動作可能です。そのためコストパフォーマンスではAMDが上回るでしょう。
今、Intelとしてはかなり厳しい状況に置かれているでしょう。実際に日本国内の販売シェアではAMDが上回ったというデータもありますし、最新の一部製品でしか10nmを実現できていません。
対抗馬となるIntelのCascade Lake-Xに関する詳細記事はこちら
考察
AMDの今回の発表内容は非常に地震に満ち溢れた内容となっていました。それもそのはず、Intelを圧倒する内容なのですから。
プラットフォームの長期的な互換性を重視するAMDとしては珍しいソケットの完全な刷新ですから、第三世代Ryzenのパフォーマンスアップにはかなり期待が持てるでしょう。レビューの解禁が待ち遠しいです。
3990X・3980Xはあるか?
今回発表となったRyzen Threadripper 3970X・3960Xの上位モデル3990X・3980X(仮)ですが、今後出てくる可能性は高いと言えるでしょう。これにはいくつかの理由があります。
まずはAMDの特性です。AMDは1コアあたりの性能よりかはコア(スレッド)の数を増やす傾向にあり、Threadripperシリーズも第1~第2世代にかけて最上位モデルのコア(スレッド)数を2倍にしています。しかし今回発表された第3世代最上位モデルの3970Xは前世代の最上位モデル2990WXと同数の32コア64スレッド止まりです。
次に一世代あたりのラインナップ数です。第3世代Threadripperは依然3970Xと3980Xの2機種の発表にとどまっていいます。従来のThreadripperシリーズは第1世代が3機種、第2世代が4機種出されています。そのため少なくとも、あと1つか2つは発表されてもおかしくありません。
そして最後にサーバー向けCPU、EPICの存在です。現行のEPICが最大32コア64スレッドだったのに対し、今年8月の発表によると最新のEPICは驚異の最大64コア128スレッドとなっています。そのためThreadripperの最上位モデルのコアが32コア以上となる可能性もあります。
以上の理由より私はAMDが今後、『Ryzen Threadripper 3990X・3980X』などといった上位モデルを出してくると考えています。また他の一部サイトでも3990Xなどがうわさがされています。
コメント